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【誰でも描けるERD】-はじめに
DOA Evangelist:小見山 昌雄


 データモデルとか、エンティティ・リレーションシップ・ダイアグラム(以下、ERDとかER図と略記します)と言うと、何かシステムの専門家が使う、難しいモデル図のような印象があるかも知れません。
 ER図は、ビジネスなどの対象を、エンティティとエンティティ間の関連を使った、簡単な表記ルールで表現するものなので、描きやすさと言う点では、皆さんが業務の説明をする時に描くマンガやポンチ絵と大した違いはありません。
 また、ER図の創始者ピーター・チェン(Peter P. Chen)が「世の中に存在するあらゆるものは、具象的なものであれ抽象的なものであれ、実体と関連という2つの概念で表現可能である」と述べているように、基本的に何でも描くことが出来ます。
 ただし、エンティティとリレーションシップで表現するので、それ以上のニュアンスを表現することは出来ませんが、ビジネスを分析してビジネシステムを開発するための基礎情報を整理するためには、それで十分です。

 この【誰でも描けるERD】コラムでは、「私は、このビジネスをこんな風に見ています。」と言うこと、つまりビジネスに対する私の「概念」(頭の中に描いているイメージと考えて頂ければ良いかと思います)をER図で表現する方法を説明します。
 概念モデルは、概要を描いたモデルではなく、「私はこう考える」(ここでは対象がビジネスなので「私は、ビジネスをこのように理解しています」)ということをモデルで表現するものです。
 モデルに表現して可視化すれば、通常見えない「考え=概念」を他者が理解し、検証・評価することが出来ます。
 このコラムを参考にして頂き、社内で簡単なルール決めをすれば、今まで単なる「感じ」を描いていたマンガやポンチ絵が、ビジネスルールを詳細に表現するコミュニケーションツールにレベルアップします。
 そのコミュニケーションツールを大いに活用し、それぞれがそれぞれの自分の考えをER図に表現し、相互に確認・検証し、影響し合うことで、より良いビジネスの形を追求して下さい。
 何しろ「概念」ってやつは、人には分からない上に、自分でもどう考えていたのか良くわからなくなるものなので、他者にも自分にも分かる形で可視化することには大きな意味があります。
 それぞれがビジネスをどう見ているのかをER図で明らかにした上で、もっとも最適な組み合わせ、最も適切な解釈と言うものを討議・検討することは、文章や言葉だけを頼りに調整を試みるより、はるかに効率良く作業が進みます。
 特に、各自が断片的・部分的な業務知識しかない場合などは、その断片的な知識を組み合わせる検討基盤として、モデルが威力を発揮します。
 と言う訳で、このコラムでは、既に自分の理解がある状態、即ち、既に「こう考える」と言うビジネスルールを把握した状態から、その私の考えを描く作業、世間で言う、トップダウンアプローチで描くER図の描き方を説明します。
 ちなみに、ビジネスモデルとかデータモデルとかを作る場合に、トップダウンアプローチとボトムアップアプローチがあることが説明されます。
 ボトムアップアプローチとかボトムアップ分析とかは、実際に使われているユーザインターフェースなどから、データ項目を確認して、ビジネスの構成要素とその関連を求めるものだと説明されます。
 これに対し、トップダウンアプローチとかトップダウン分析とか表現されている方法は、説明があいまいで何をどうすれば良いのかよく分かりません。
 ボトムが一つ一つのデータ項目や個々のユーザインターフェースである事に異論は無いようですが、トップが何なのかが良く分かっていないようです。
 どこからか一般的で標準的なモデルを引っ張って来るような説明をしているものがありましたが、それでは少なくとも「そのビジネスのモデル」とは言えません。
 少なくとも現在のビジネスの分析とかモデルとは言い難いので、トップダウンデザインとかトップダウン設計との表現が適切ではないでしょうか。
 「そうだよなー、ろくにうちのビジネスの実態を調べた訳でも無いのに、どこから持って来たのかわからない代物を『わが社が経験的に作りだした、業界のベストプラクティスです。』などと言われても、本当にそのモデルがうちで使えるのかねー」と思っていた方、そのモデルは少なくとも、貴社のビジネスを反映したモデルではありません。
 おまけに、当然ながらベースになっている用語・単語が違うはずなので、データ項目やビジネス要素の名称が違っており、そこの調整から入るとなると、先に行くに従って、モデル作成の工数を抑えるつもりで行った、トップダウンアプローチ(のような作業)が、実は全く関係の無い地図を見ながら進んでいたのだと分かり、高い付けを払う破目になりかねません。
 ここでは、ビジネスルールは明白なので、それを元にデータモデルを描くことをトップダウンアプローチ、トップダウンモデリングと呼んでおりますので、お間違いの無いように。
 では、次回からER図の描き方を説明させて頂きます。
 

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