物理モデル
関連の無い(又は少ない)データモデルを見せられると、当然ながらなぜ関連を記入していないのかを聞かなければならない。
また、元エンティティと明細エンティティにデータ項目の重複があるとか、エンティティ内に集団項目の繰り返し構造がある場合も、当然、何故かを確認する。
その場合、良く聞く答えが「物理モデル」だ。
あたかも「物理モデルで設計しました」と言う文言が、理不尽な受難に対する神の救済を求める祈りの言葉の様に繰り返されるのだ。
「では、物理モデルを描くまえの概念モデルを見せて下さい」と言うと、再度「物理モデルで設計しましたから」と、物理モデルを作っているのだから、概念モデルなど必要無いと主張する。
どうやら、彼らの理解では、最終的にDBMSへの実装形が決まれば良いのであって、概念モデルだ論理モデルだと言うものは単なる下書きのような中間生成物に過ぎず、自分のように優秀な設計者になると(と思っているとしか思えないのだが)そのようなものを描く必要は無く、物理モデルを描く事が出来ると思っているよだ。
頭がおかしくなりそうである。
改めて言うまでも無く、世の中にデータベース設計をその様に説明しているものを、少なくとも私の知る限りでは見た事が無い。
多分、自分なりにファイル設計の方法からデータベース設計と言うものを外形的類似性から演繹的に考えた結論だろう。
と考えると、同様の情報からスタートして同じように間違った結論に大勢が辿りついていると言う、システムエンジニアの思考経路の類似性には驚くばかりだが、学習時間も世の中の情報に触れる時間も十分にあると思われる、いわゆる大手メーカーや一流ベンダーの技術者の中にもその様な例があるので、これは不勉強や実力不足と言うよりは、慢心や顧客軽視の結果と言わざるを得まい。
データモデルは骨董では無い。
見れば善し悪しの判断は専門家でなくても容易だ。
その最も容易な判断基準の一つが関連の数だ。
少なくとも関連の無いエンティティなどは無いし、関連を書いていないデータモデルなどは論外だ。
直ちに指摘するべきだろう。
その回答が「物理モデルで描きました」なら、直ちに技術者の交代を要求すべきである事は言うまでも無い。